「高野聖」--泉 鏡花
若い修行僧の宗朝は、飛騨から信州への山越えをする際、
ふもとの茶屋で富山の薬売りに出合った。
その先の二股道で二人は道を別にしたが、
宗朝は薬売りが行った道は危険で、いまや人の往来のない旧道だと知った。
そこで、仏の道に仕える宗朝は、
見殺しにできず、その後を迫って旧道に入った。
急いで歩いていくと、蛇の群れに道を妨げられて、立ちすくみ、
やっとの思いで難を逃れると、次はヒルが雨のように降ってきて、宗朝の血を吸った。
そんな恐ろしい目に遭い、疲れきった頃、宗朝はやっと一軒の家に着いた。
そこには、この世の者とは思えぬ美しい女が住んでいた。
女は宗朝を泊めることを承知し、馬市に出す馬を連れて来た男に留守を頼むと、
旅の汗を流すために谷川へと宗朝を案内した。
谷川に着くと「すっぽり裸体になってお洗いなさいまし、
私が流して上げましょう」と言つて女が宗朝の脊を流してくれた。
いつの間にか、女は着物を脱いで、全裸になっていた。
川への往復の途中、蛙や大コウモリや猿が女にまとわりつく。
女はいたずらの過ぎる子供をあしらう母親のようであった。
家に帰ると留守を頼んでいた男が、馬市へ行くため馬小屋から馬を引き出していた。
宗朝を見て「もとの体で帰らっしゃったの」と不思議な事をいう。
その夜、宗朝は家の周りを鳥や獣が二十も三十も取り囲んで、
鳴いているような異様な気配を感じた。
そして、その気配のうごめくのに応えるかのように、女がうなされる声が聞こえてくる。
宗朝が一心不乱に陀羅尼経を唱えるとやがて気配は静まり、女もうなされなくなる。
翌朝、宗朝は一夜の礼を言ってその家を発ったが、女の妖艶さが忘れられず、
引き返して女と一緒に暮らすことを考えていた。
しかし、そこへ昨日馬を連れて行った男と出会う、昨日連れていった馬は、
女の魔力によって姿を変えられた薬売りの男であり、女にまとわりついた動物たちは、
女にもてあそぱれた男たちの成れの果てであると教えてくれた。
それを聞いた宗朝は、ぴっくりして一目散に里へ下りていった。
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