目次>◆グスコーブドリの伝記-宮沢賢治

 

「グスコーブドリの伝記」--宮沢賢治

グスコーブドリは、イーハトーヴの大きな森のなかに生まれました。

おとうさんは、グスコーナドリという名高い木こりで、どんな大きな木でも、

まるで赤ん坊を寝かしつけるようにわけなく切ってしまう人でした。

ブドリにはネリという妹があって、二人は毎日森で遊びました。

ある日おとうさんは、森へ行ったまま帰らなくなり、

次の日、「わたしはおとうさんをさがしに行くから」と言って

お母さんも森へいてしまいました。

それから、二十日(はつか)ばかりぼんやり過ぎましたら、

ある日、籠(かご)をしょった目の鋭い男がやってきて。

「おじさんといっしょに町へ行こう。毎日パンを食べさしてやるよ。」

そしてぷいっとネリを抱きあげて、せなかの籠へ入れて、そのまま、

風のように家を出て行きました。

ブドリは、泣いてどなって森のはずれまで追いかけて行きましたが、

とうとう疲れてばったり倒れてしまいました。

ブドリは一人ぼっちになってしないました。

そして、ブドリはある男のもとで、オリザの苗を植え、オリザ作りに精を出しました。

そして6年後、ブドリはオリザ作りの立派な本を書いた、

クーボー大博士に会う事ができました。

そればかりか、

大博士はブドリにイーハトーヴ火山局での仕事を紹介してくれたのです。

火山局ではペンネン老技師の元で機器の扱い方や観測の仕方を学び、

一生懸命働いたり勉強したりしました。

2年ばかりたちますと、ブドリは他の人たちと一緒にあちこちの山に

器械を据え付けに出されたり、

据え付けてある器械の悪くなったのを修繕にやられたりもするようになりましたので、

もうブドリにはイーハトーヴの三百幾つの火山と、

その働き具合は掌(たなごころ)の中にあるようにわかって来ました。

ブドリが27歳の時、地球全体に寒波が押し寄せました。その対策を考えていたブドリは

ある晩、クーボー大博士のうちをたずねました。

「カルボナード火山島が、いま爆発したら、

地球全体を平均で五度ぐらい暖かくするだろうと思う。」

「先生、あれを今すぐ噴かせられないでしょうか。」

「それはできるだろう。けれども、その仕事に行ったもののうち、

最後の一人はどうしても逃げられないのでね。」

「先生、私にそれをやらしてください。」

それから三日の後、火山局の船が、カルボナード島へ急いで行きました。

そこへいくつものやぐらは建ち、電線は連結されました。

すっかりしたくができると、ブドリはみんなを船で帰してしまって、

じぶんは一人島に残りました。

そしてその次の日、イーハトーヴの人たちは、青ぞらが緑いろに濁り、

日や月が銅(あかがね)いろになったのを見ました。

けれどもそれから三四日たちますと、気候はぐんぐん暖かくなってきて、

その秋はほぼ普通の作柄になりました。

その冬を暖かいたべものと、明るい薪(たきぎ)で楽しく暮らすことができたのでした。

  お薦めサイト

「入館無料!あらすじ文学館」気になる名作30作品が30分でわかる!
詳しくは、http://tosyokan2.web.fc2.com/

「あらすじで読む!芥川龍之介集」名作30作品が30分でわかる!
詳しくは、http://nrkakutagawa.web.fc2.com/

20年の経験を持つ一級建築士が教える裏側から見たマンション選びのポイント
詳しくは、http://manshonerabi.web.fc2.com/

 

 

目次

トップページ
◆高野聖------------泉 鏡花
◆機械--------------横光利一
◆坊ちゃん----------夏目漱石
◆銀河鉄道の夜------宮沢賢治
◆五重塔------------幸田露伴
◆破 戒------------島崎藤村
◆鼻--------------芥川龍之介
◆走れメロス---------太宰 治
◆彼岸過迄----------夏目漱石
◆カインの未裔-----有島武郎
◆風の又三郎--------宮沢賢治
◆地獄変----------芥川龍之介
◆こころ------------夏目漱石
◆田舎教師--------田山花袋
◆蜘蛛の糸--------芥川龍之介
◆舞 姫------------森 鴎外
◆平凡----------二葉亭四迷
◆人間失格----------太宰 治
◆野菊の墓--------伊藤左千夫
◆羅生門----------芥川龍之介
◆牛肉と馬鈴薯----国木田独歩
◆阿部一族----------森 鴎外
◆山椒大夫----------森 鴎外
◆三四郎------------夏目漱石
◆斜 陽------------太宰 治
◆グスコーブドリの伝記-宮沢賢治
◆高瀬舟------------森 鴎外
◆吾輩は猫である----夏目漱石
◆夜明け前----------島崎藤村
◆或る女-----------有島武郎

 
inserted by FC2 system