目次>◆或る女-----------有島武郎

「或る女」---有島武郎

葉子は19歳の時、最初の夫、木部と知合うが、既に何人もの男に恋を仕向けられて、

その囲みを手際よく操りながら、自分の若い心を楽しませていく手練手管を十分に持っていた。

上野の音楽学校に入学したものの、教師の一言でヴァイオリンを窓の外に放り投げ、

そのまま退学してしまった。

葉子は、多くの男を吸い寄せてはもう一歩のところで突き放してきたが、

木部との恋には燃え上がった。

しかし、結婚後たった2週間で恋は冷え、2ヶ月で破局を迎えることとなった。

だが、この時すでに葉子は木部の子を宿していたのである。

それから3年が経過した。両親は亡くなり、アメリカにいる婚約者、木村のもとへ旅立つ。

しかし、船中で倉地の情熱に惹かれ、アメリカに着く前に関係を持ってしまう。

そして葉子は船を下りることなく、そのまま日本に帰国するのだった。二人の関係は、

新聞沙汰となり、世間から批判されるが、婚約者も子供も捨てた葉子と倉地の情熱は

燃え上がる一方だった。

やがて会社を辞めることとなった倉地は、スパイ行為で生計を立てるようになる。

警察からも疑われ始めた倉地は、葉子にもだまって姿を消した。

葉子もまた健康を害し、医者の説得で手術を受けるが、直後に容態は悪くなる。

病室の中で「痛い、痛い、痛い」と言いながらその生涯を閉じた。

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