目次>◆牛肉と馬鈴薯----国木田独歩

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牛肉と馬鈴薯--国木田独歩

明治倶楽部とて芝区桜田本郷町のお堀辺に西洋作のあまり立派ではないが、

それでも可なりの建物があった。

この倶楽部が未だ繁盛していた頃のことである、或年の冬の夜、

珍らしくも二階の食堂に燈火が点いていて、時々高く笑う声が外面に漏れていた。

倶楽部では、7人の紳士たちがそれぞれの人生観を語り始めていた。

岡本が倶楽部に訪れたのは、彼らの話が盛り上がった頃だった。

そのうちの1人、上村は、北海道で働いていた。

理想は馬鈴薯だと彼は言う。

新天地である北海道に渡った彼は、理想と現実の大きなギャップを痛感し、

「理想ばかりでは飯も食えない」と現実主義に転身した。

ステーキみ馬鈴薯が付いてくるように、理想は現実の付属物である、と彼は主張し、

理想に燃える人を「馬鈴薯党」、現実主義者を「牛肉党」と呼ぶ。

岡本に話す番が回ってきた。彼はかつて愛した少女とその死について、語った。

岡本は少女を失った痛みについて触れた、

少女の死は僕に取ての大打撃、

どうか少女を今一度僕の手に返したい。

僕は平気で白状しますが幾度僕は少女を思うて泣いたでしょう。

幾度その名を呼で大空を仰いだでしょう。

実にあの少女の今一度この世に生き返って来ることは僕の願です。

しかし「真実の願い」少女の蘇生ではなく、別にあると言うのだった。

「こいつは面白い、早くその願というものを聞きたいもんだ!」と綿貫が言った

岡本は静に

「吃驚(びっくり)したいというのが僕の願いなんです」

「何だ! 馬鹿々々しい!」

「何のこった!」

「落語か!」

人々は投げだすように言ったが、近藤のみは黙言て岡本の説明を待ているらしい。

「即ち僕の願とは夢魔を振い落したいことです!」

「何のことだか解らない!」と綿貫は呟やくように言った。

「人に驚かして貰えばしゃっくりが止るそうだが、

何も平気で居て牛肉が喰えるのに好んで吃驚したいというのも物数奇だねハハハハ」

と綿貫はその太い腹をかかえた。

また、この話を理解できなかった一同も嘲笑した。

岡本は一所に笑ったが、近藤は岡本の顔に言う可からざる苦痛の色を見て取った。

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